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こんにちは、司法書士の峯村です。

「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもので、暗くなるのも早くなりましたし、めっきり涼しくなってきました。
季節の変わり目に風邪をひかないよう、注意したいこの頃です。

 

世にいう「芸術の秋」にちなんで、ちょっと「らしくない」話を。

 

普段から美術品を鑑賞する習慣などなく、美術の成績もてんでだった私ですが、まったく素人ながら、絵画に心を動かされることがこれまで何度かありました。

 

たしか大学生のころだったと思いますが、『田中一村』という人を知り、図書館で画集を見た際、非常に心惹かれたことを、今でもよく覚えています。
日本のゴーギャンと呼ばれたそうですが、なかなか壮絶な人生を送り、たぐいまれな集中力で、時代の先を行く絵を描き上げた人です。この人の絵は『探求』という言葉がよく似合います。
もしよければ、インターネットで調べてみてください。とても美しい色彩の絵の向こうに凛とした眼差しを感じる、素晴らしい作家です。

 

また、つい先日、ちょっと違うまなざしを持つ画家の作品に、出会いました。
場所は信州新町美術館。家族を連れてお隣の化石博物館を訪れたついででした。
入口を入って、ふと、「横井弘三展　２階」という文字が目に入りました。
家人はあまり興味を持ちませんでしたが、半ば強引に２階へ上り、その『横井弘三』という画家の絵を鑑賞しました。

すでに鬼籍に入っている作家ですが、なんというか、非常に牧歌的な絵で、技術があるのかないのか、ちょっとよくわからない、クスっと笑いがこぼれるような絵が並んでいました。絵画でもあり、漫画でもあり、字もたくさん書いてあるポスターのようでもあり、不思議な作風です。ただ、確かに感じたのは、「絵を描くことは生きることだ」と言わんばかりの、人間性の発露でした。

なんというのか、絵というのは、テクニックでは言い表せない、人間味も含めた、総合力なんだなあ、ということをこの人の絵からは感じさせられました。そこまで知られていない作家のようですが、この人はもっと知られてよい、知られるはずだと思いました。先ほどの田中一村とはまた別の意味で感動させられました。

 

優れた芸術に触れるたび思うのは、一流の人は、同じ題材を見ても、見え方・聴こえ方・捉え方が、我々にくらべて圧倒的に細かく、繊細なのだろうな、ということです。

「あ、この人は、私が見えていないものが見えている」と感じます。

普通の人が、おそらく入口のところで放棄してしまったものを、芸術家と呼ばれる人はおそらく手放さず、それを信じ、温め続けてきたのでしょう。我々が見えていない、あるいは見過ごしてしまうものを掬い取り、その人にしかできない方法で束ねて目の前に提示し、気づかせてくれる、それが本当の芸術家の仕事だな、と感じます。

 

　ちょっと話は変わりますが、世界に通用する才能を持ったシンガーソングライター？が、日本から出てきていると思います。大人から子供まで、その歌手が大好きです。一方、時に批判として「全部同じ曲に聞こえる」という声もありますが、先の絵画の例をとれば、つまり、批判をする人は、まだ気づけていないだけ、ということが言えそうです。政治で大衆をだますことはできても、芸術で大衆をだますことはできない、と私は考えています。

 

優れた芸術作品は、それに触れる人の姿勢を問うているのではないでしょうか。

「あなたは、どう生きていますか？」と。

しかも、それは冷たい口調ではありません。穏やかに、静かに、という具合です。影響という言葉は曖昧な言葉ですが、本当に素晴らしい芸術作品は、他人の生き方に何かを強要しません。ただ、目を覚まさせるだけ、感電させるだけです。「私は、私の道を行く。あなたは、あなたの道で頑張りなさい」と言っているようです。だからこそ、害悪になりえない。だからこそ、芸術というものはいつの時代も無くならないのでしょう。

 

　デジタルが発達し、我々はいろいろな芸術作品にすぐに触れることができます。これは本当に素晴らしいことだと思います。世の中には人を貶めるような言葉があふれていますが、一方で、とても素晴らしいものともすぐに繋がれる、その機会を大事にしましょう。また、好きになった芸術家がどのように生きたかというところまで興味を持って掘り下げていく作業は、とても楽しい作業です。

 

長くなりましたが、もう一つだけ触れておかなければいけないことがありました。最近、自死のニュースが非常に多くなっています。間違いなくコロナウイルスの問題が影響しているのですが、『心』というものの闇は、常に私たちの中にあることを教えており、それとどう向き合って生きていくか、そして、なぜ人間は生きなければいけないのか、そういうことに気付く端緒もまた、優れた芸術作品・特に文学作品の中にある、と私は感じています。

本当に、これからますます生の肯定が難しい時代に突入していく予感がします。自分を鍛える、根を張る経験の大切さこそ、子供たちにも教えなければいけない一番のことではないか、と強く思うこのごろです。

 

最後になりましたが、おかげさまで、１０月１日で当事務所は１０周年を迎えました。

これもすべてご支援いただいた皆様のおかげです。本当にありがとうございます。

 

尊大な希望ですが、願わくば、当事務所が関わらせていただいたお客様にも、芸術作品に触れたときに近い感想を持っていただけたら、それはそれは幸せだろうなあ、究極的にはそういう仕事をしたいなあ、というのが、１０周年を迎えた今、感じていることです。

振り返れば、我々の日々の仕事は、単調な繰り返しのようにも思えます。私にもそんなときがあります。でも、そういうとき、私は常に「本当にそうか？」と自分に問うようにしています。単調に思うのは、もしかしたら自分が見えていないだけなのかもしれないぞ、と。

 

事務所スタッフには日々感謝しています。優柔不断な私に、良く付き合ってくれていると思います。とても頼もしく思っています。

皆が自らの仕事に誇りを抱いて、それを天職（とまではいかなくても、自分の能力を活かせている職場）だと思える、そんな状況で仕事ができれば最高だなあ、と、そんなことを思う今日この頃です。そういう事務所は、お客様にも最高の成果を提供できるだろうな、と思います。

我々はまだその過程にいます。まだまだ成長したいですし、しなくてはなりません。

大事なことを忘れずに、皆で事務所を育てていきたいと決意を新たにしています。

 

 

今後とも当事務所を、何卒宜しくお願い致します。

 

司法書士：峯村